2000年冬:クリスマスピアノオフ会(12月17日)





21世紀まであとわずかとなった世紀末のクリスマス、今世紀最後のラフマニアン大ピアノオフ会が行なわれました。 夏にもまして盛況となったこのピアノオフ会、前回に引き続きまして、幹事の最後の仕事ということで、恐縮ながら不肖かとちぇんこが筆を取る次第であります。

※今回はゲストの方もお迎えしたとのこともあり、ロシアンネームではなく、他サイトでも常用されているハンドルネームを主として使用いたしました。



2000年12月17日、今世紀最後のピアノオフ会&クリスマス会&忘年会が、池袋にて行なわれた。前半のピアノオフの場所は池袋東口のスタジオ・フォルテ。14時の開始を前に寒い中を続々と集結するラフマニアンたち。わくわくどきどき、高鳴る胸をおさえつつ、会場に入っていった。さあ、ピアノオフの開始である。


トップバッターはやはりKUMOさんに飾っていただいた。ステーンハンマル:3つの幻想曲Op.11より第1番の弾き始めをさらっとお弾きになったが、指がまだ温まっていないようで、中断。ちょっと時間を取ってJ.S.バッハ;イギリス組曲第3番ト短調BWV808より「ジーグ」を指慣らしに、と弾いてくれた。これを準備運動にされては、筆者ごときの立場はまったくないのである。指慣らしながら、バッハ作品のピアノ表現の可能性を見事に示唆しており、一気に弾ききった演奏に、大きな拍手が贈られた。今日も彼は絶好調である。

KUMOさんがトップバッターなのは先陣を切っていただく意味では素晴らしいが、後に続く方が出てこなくなってしまうところが難点である(笑)。そんなわけで少しの間があいてしまったが、そこはやはり気配りの女性うさぎさんがソロを弾いてくださるとのお申し出。と言っても、うさぎさんの腕前からしてKUMOさんの後さらにピアノオフに勢いを付けるのには、まさに適役なのだが。曲はなんとドビュッシー:前奏曲集第2巻より「花火」。まさに瞬間瞬間の煌きがピアノオフの始まりを実感させてくれる。コーダで消えゆく音列の中で遠くに夢うつろの世界で鳴り響くかのような旋律が印象的。さすが我が師匠である(笑)。うーちゃんが弾けばぴーちゃんも弾く、と言うことで(?)、続いてはこれまた後を続けていただくにふさわしいぴちさんのご登場。曲はチャイコフスキー:《四季ー12の性格的描写》Op.37bより「クリスマス(12月)」。帰り道でヒロノフさんと話していたことなのだが、ぴちさんの選曲のセンスは、やはりシロウトにはない非凡さがある。ぴちさんのピアノはあいかわらず音がクリアに鳴る。美しくチャーミングな演奏、12月のピアノオフにふさわしい情趣を聴かせて下さった。


さて、ここまで来ればピアノも温まってきただろう(??)。となれば、ピアノをダイナミックに鳴らすことにかけては並ぶ者のないあのお二人、そうササーホフさんとヒロノフさんの出番である。まずはササーホフさん(王様)が、「余がピアノの弦が緩んでいないか確かめてつかわそう」と言わんばかりに、王国のテーマ曲その1ラフマニノフ:前奏曲ト短調Op.23-5をエンジンフル稼働でお弾きになる。さすがにこの曲は誰にも譲らないという情熱を持って一気に盛り上げた。続いてヒロノフさんのウォーミングアップはショパン:12の練習曲Op.10より第12番「革命」。王様に負けじと料理省の腕を振るう、じゃなくて、ピアノの腕を披露される。ヒロノフさんのショパンと言えば「稲城のポリーニ」の異名どおり、ラフマニアンのあいだでは定評のあるところ。ダイナミックな音楽作りは他の追随を許さない。お二人ともさすがである。皆さんがソロの腕前を順番に披露されたところで、なぜか筆者も促されてしまった。ううむ、このメンバーの後に弾くことになろうとは(号泣)。かとちぇんこによるシューマン:《子供の情景》Op.15より第7番「トロイメライ」(を一応弾いたつもり)の演奏である。ペダリングを頑張ったとの嬉しいお言葉をあとでいただいたが、あれは単にペダルの上に置いた足が緊張でがくがく震えていただけである。皆様にはお聞き苦しいものを強要し、まったくお詫びの言葉もない。ちなみに、夏はいつも何かとお世話になっているガラナスキーさんのためにカリンニコフを弾いたが、今回の演奏は、こんなへたっぴでも嫌がらずにいつも連弾をしてくださる師匠うさぎさんに捧げたものであることを、今更ながらに追記しておこう。

さてさて…。今回はヒロノフさんの計らいで、現在は更新停止中だがラフマニアンのうち何人かがお邪魔させていただいているサリーさんという方のサイトから、ピアノオフに興味をお持ちだというゲストをお迎えした。横浜ショパンさん、ますみさん、midoriさんである。何かいかがですか、という促しに対し、横浜ショパンさんがお得意のレパートリーショパン:幻想即興曲嬰ハ短調Op.66を弾いてくださった。サリーさん主催のピアノオフに参加して感じたことなのだが、このサイトの大人になってからピアノを始めた方を中心とする集まりの方々は、本当にピアノを愛していらっしゃる。その思い入れは小さいころからピアノに接してきた者を軽く凌駕するほどだ。横浜ショパンさんの幻想即興曲は、そちらのオフ会でも聴かせて下さったもの。ショパンを弾いてみたいというお気持ちと共感に溢れた素晴らしい演奏であった。続いてそのゲストの方々からも口々に賞賛の言葉が聞かれたKUMOさんの再登場。先ほど弾きかけたステーンハンマル:3つの幻想曲Op.11より第1番を今度は全曲披露である。筆者も含めた何人かは、日頃えみーりゃさんの掲示板や筆者のリビングでお馴染みの斉諧生さんの布教により、北欧スウェーデンの知られざる作曲家ステーンハンマルについて最近よく話題にしていたのである。筆者もこの曲はすでにCDで聴いて好きな作品であったが、生で聴かせていただき、さらに気に入ってしまった。これには作品の魅力もさることながら、KUMOさんの演奏によるところが大きいだろう。ドラマティックでありながら、ファンタジーにあふれ、胸を締め付けられるような狂おしいまでの情熱と、涙が出そうになるほど美しくピアノを鳴らす感情の豊かさをもって、プロ並みの解釈を示された。さすがとしか申し上げようがない。報告したところ、斉諧生さんも大変お喜びであった。さて、北欧というキーワードが出ては、しほーにゃさんが登場しないわけにいかない。ご自身のページでも熱心に紹介されているシベリウスのピアノ作品の中からシベリウス:《6つの小品》Op.94より第1番「踊り」を披露。チャーミングで繊細なシベリウスのピアノ作品は、しほーにゃさんの軽快なピアニズムによく似合う。素敵な演奏はシベリウス布教に十分な効果を表したようで、弾き終わった後、早速何人かの方が楽譜を覗きこんでおられた。続いてはヒロノフさんが、2日で急遽仕上げられたという秘曲(笑)メンデルスゾーン:《無言歌集第2集》Op.30より第6番「ヴェネツィアの舟歌」をお弾きになった。激しい曲もさることながら、しっとりとした作品に深い共感をもって没入されるヒロノフさんもまた魅力的である。メンデルスゾーンの親しみやすい作風を秀逸に表現され、たった2ページの小品に命を吹き込まれた。

そろそろ気晴らしが必要か、というところで、ヒロノフさんが取り出されたのがなんと「ラジオ体操」のピアノ伴奏譜。この楽譜、銀座のヤマハでは目立つところに横置きされているほどで、意外に人気のある楽譜らしい(笑)。これくらいなら初見でいけますよとKUMOさんラジオ体操第1を弾いてくださった。一同爆笑。元気に体操する者続出。こんなときでもKUMOさんは絶妙なペダリングをしていたことを筆者は見逃さなかった(笑)。堅苦しい「発表会」のような雰囲気になりかけたかと思えば、一転この楽しさ。これだからピアノオフはいい。ラジオ体操の興奮冷め遣らぬところへ、遅れてジュンキーノフさんがいらっしゃった。ジュンキーノフさんは、あのアムランを日本へ招聘する原動力となったことからも明らかなとおり、ピアノマニア界ではよく知られたピアノ通かつピアノ弾きである。駆け付けたついでにそのまま促され、少々テレながらもピアノの前へ。立派な自己紹介演説の後(笑)、曲目を告げる。スクリャービン:幻想曲である。大曲だ。弾き始められて、やはりすごいピアノ弾きだということを目の当たりにした。印象的な重低音の扱い、パワフルかつしなやかな指の動き。ササーホフさんやヒロノフさんから聞いていた噂通り、いや噂以上の凄演であった。スクリャービンつながりで、続いてはヒロノフさんによるスクリャービン:《左手のための2つの小品》Op.9より第2番「夜想曲」。夏のオフ会でも披露してくださった作品である。夏は、他の作品の練習とも重なり、途中楽譜を取り出されたヒロノフさんであったが、今回は完璧な暗譜のもとに、左手一本の至芸を見せつける。左手のみで弾きとおすことさえ気が遠くなるこの作品を、メロディラインをクリアに浮かび上がらせ、気持ちを込めて表現された。作品に対するヒロノフさんの深い共感が伝わってきて、聞き手が皆幸せな気持ちになる瞬間である。次も、夏のオフ会からの継続的なプログラム、KUMOさんによるグリンカ=バラキレフ編:ひばりである。夏よりもさらに表現力に磨きをかけた演奏、逆光を背にふわりと翻る一羽のひばりがまさに眼前に見えたかのようであった。彼の演奏は本当に美しい。

このへんで、ひとつ幸せなお知らせをしておく必要があるだろう。我々しまのふすかやファンクラブの法律顧問、人間山脈の異名を持つオノーリンさんが、ピアノオフ会直前に年下のピアノの先生との婚約を発表されたのである。聞くところによれば、夏のピアノオフが刺激になってデジタルピアノを購入されるとともに先生をお探しになり、お願いした末のご縁だったようである。それならば、愛の結晶たるオノーリンさんのピアノを聴かなければ、今回のピアノオフの目的は達せられない。皆の強いリクエストに、オノーリンさん、ようやく重い腰を上げられた。曲はベートーヴェン:バガテル「エリーゼのために」イ短調WoO.59。幼少の折のピアノ経験もないというオノーリンさん、なんと暗譜、ペダル付きで、この作品をスムーズに弾きとおしてしまった!!途中一度KUMOさんの助けを借りたが、そのKUMOさんのお話によれば同音連打をきちんと指を変えてやっておられたとのこと。ううむ、どこかの記憶省とは違って正統派である。さすがに愛の力を感じてしまった。これからも、ご夫婦デュオでのデビューを目指してさらに練習を積んでいただきたいものである。末永くお幸せに!!

夏のオフ会の収穫と言えば、しまのふすかやファンクラブをいつも支えてくださっているガラナスキーさんのヴァイオリンを初めて耳にする機会となったことも挙げられよう。夏に続いてヴァイオリンを持参され、期待が高まる。今回も皆の強いリクエストに応え、弾いてくださることとなった。そしてなんと伴奏にぴちさん登場。KUMOさんやうさぎさんへの伴奏依頼の話は聞いていたが、ぴちさんにもお声がけされていたとは。なにげにガラナスキーさんもやる気ではないか(笑)。というわけで、ガラナスキーさん(Vn)&ぴちさん(pf)デュオである。「えっ、何を弾くの?」という皆の期待が高まったところに鳴らされたのは、なんとあの秘曲ボルムベスク:望郷のバラード!ヴァイオリニスト天満敦子さんの代名詞とも言えるこの哀感溢れる作品はまさに秘曲の名にふさわしい。ガラナスキーさん、人前で弾くと相当緊張されるご様子で、肩や膝がぶるぶると震えて見ているこちらがお気の毒にさえなってしまったが、それでも何とか弾きとおされた。その震えが作品の独特の寂寥感を増幅しており、まったく気にならなかった。中低音域がとても優しく深い音色になっているのは、ひとえにガラナスキーさんのお人柄のなせる業であろう


さて、ガラナスキーさんのヴァイオリンがアンサンブルのお時間の到来を告げた。伝説のあのデュオに登場していただかなくてはなるまい。KUMOさん(1st)&ぴちさん(2nd)の、デュオ○○○○である。前回の初顔合わせによるドビュッシー「小組曲」の衝撃から4ヶ月。ただでさえ素晴らしいこのデュオが、今回は打ち合わせと練習をされてのぞむ作品、それがシューベルト:幻想曲ヘ短調Op.103(D.940)。連弾作品の頂点に位置する大曲である。演奏時間20分にも及ぶ大作、これをお二人は見事に手中に収め、たいへん感動的な演奏を聴かせてくださった。技巧うんぬんではない(勿論このお二人の演奏なのだからそれも素晴らしいことは確認しておくまでもないが)。ただこの一言「ピアノって、音楽って、本当に素晴らしい。」筆者も含めた参加者全員がそう思ったことだろう。今日のオフ会の白眉であったと申し上げて差し支えがないと思う。しばし異様なほどの静けさと興奮が会場に漂った。そのあとを引き取ってくださったのは、ジュンキーノフさんラフマニノフ=ワイルド編:歌曲「おとめよ、もう私のために歌うな」Op.4-4である。編曲者及びピアニストとしてのアール・ワイルドの名前は、ラフマニアンの間ではよく知られているところであり、この超名曲&名編曲が生演奏で聴ける貴重な機会となった。ご自身は練習不足と謙遜されていたが、この絶美の歌曲を完全にマスターされており、この作品が大好きな筆者もうるうる状態で聞き入った。歌曲の中で個人的に最も好きなこの作品を聴かせてくださったことに深い感謝を表したい。さて、ピアノオフもだいぶ進んでリラックスした雰囲気になり、連弾タイムにも突入したせいか、仲良しコンビのしほーにゃさん(1st)&えみーりゃさん(2nd)もピアノの前に進み出てくださった。お二人のピアノが聴ける貴重な機会である。お二人もピアノオフに向けて連弾の秘密プロジェクトを進行しておられたようで、J.S.バッハ:ブランデンブルク協奏曲第6番変ロ長調BWV.1051より第3楽章を披露。さすがに、日頃から見ているとおりの息のあった楽しそうな連弾である。お互いのミスにも快く演奏を止めて弾きなおす微笑ましい姿に気分が良くなったのか、筆者の後ろでガラナスキーさんが心地よさそうにメロディを口ずさんでおられた。ぜひお二人にはこれからも演奏を聴かせてほしいものである。さて、連弾と言えば、そろそろ、夏の演奏で全宇宙を驚愕の渦に巻き込んだあの凹凸デュオの登場である。かとちぇんこ(1st)&うさぎさん(2nd)によるラフマニノフ:《連弾のための6つの小品》Op.11より第5番「ロマンス」。ヘボな筆者と毎回連弾で共演してくださるうさぎさんには、お礼の申し上げようもないほどである。今回は、中間部に筆者を苦しめる左手の山場があり、かなり誤魔化してしまったが(ごめんちゃい)、セコンドのうさぎさんのサポートが良かったというこの一点のおかげで、最後までたどりつくことができた。ソロと違って緊張せずに音楽を楽しむことのできる連弾がまだ好きになってしまった。そして、一連の連弾タイムをまとめるのは、やはりKUMOさん(1st)&ぴちさん(2nd)のゴールデン・コンビによる演奏である。しかも選曲がまた抜群!ルロイ・アンダーソン:そりすべりであった。なんと楽しい曲、なんと楽しい演奏。誰もが知っているこの名作を軽快に聴かせてくださった。ここまで用意されていたとは、おそるべし。


連弾タイムもひとしきり落ち着いたところで、カメラマンに徹していらっしゃる王様ササーホフさんに再び演奏をと促す。筆者が王様の演奏によって開眼したシューマン:《幻想小品集》Op.12より第2番「飛翔」をもう一度とリクエスト。それに応えてくださった。シューマンにおいても王様のアプローチは果敢である。こんなにパワフルな飛翔はアルゲリッチのコンセルトヘボウライブ以来、歴史に現れていないのではないだろうか(笑)。前回聴かせていただいたときは途中暗譜が途切れていらしたようだが、今回は完璧な暗譜で弾きとおされた。復習されたに違いない。王様の豪快な飛翔のあとで、今日のピアノオフには何かがまだ足りないと皆が思っていた。そう、例の「あの人」による「アレ」をまだやっていなかったではないか!!これをやらずに21世紀を迎えようなどとは、考えただけでもおそろしい。ピアノの魔人ヒロノフさん、おもむろに登場。オフ会ヴァージョンのオリジナル+OSSIA合体で、ラフマニノフ:ピアノ協奏曲第3番ニ短調Op.30よりカデンツァ他を披露。そうそう、やっぱりこれを聴かなくっちゃ、ピアノオフをやった気にならない。演奏については、筆者が改めて申し上げるまでもないだろう。この作品への思い入れを表現させて、ヒロノフさんの右に出る者を我々ラフマニアンは知らない。続いてはぴちさんが、先ほど相方KUMOさんも披露してくださったグリンカ=バラキレフ編:ひばりを弾かれた。日向で戯れる小鳥たちの優しいイメージ(庭で雀を数えておられる成果か?(謎笑))から一気に集中力を高め、今までのぴちさんからは聞いていなかったようなずしりと重い低音に持っていく。たおやかさと力強さを兼ね備えた演奏。このデュオはお二人それぞれの演奏も本当にレヴェルが高い。対して、レヴェルがデコボコなあのデュオが再びピアノへ。かとちぇんこ(1st)&うさぎさん(2nd)によるディアベッリ:《ピアノ連弾のための練習曲集ー旋律的小品》Op.149より第15番である。この作品集は初学者がピアノの先生とともに連弾を練習するためのもので、連弾に詳しいうさぎさんにご教示いただいたものなのだが、中でもうさぎさんがお気に入りだとご紹介くださった第15番は、技巧は平易で明解ながら、美しく親しみやすいメロディにちょっぴり切なさが加わった愛らしい小品で、筆者も一聴忽ち大好きになった、我々デュオのお薦め作品なのである。技巧が少しは易しいとのことで、筆者が調子に乗って暴走し、うさぎさんに混乱を与えてしまった(笑)。まあ、いつものことといえば、それまでだが…。

ここからは、ラフマニアンのピアノオフの本領発揮。敬愛する御大ラフマニノフの偉大な作品を中心に名作のオン・パレードをご覧いただこう。まずはKUMOさんによる前奏曲ニ長調Op.23-4。前奏曲集のなかで、筆者はこの作品が最もKUMOさんに相応しいのではないかと思う。彼ならではの歌心と優しさが、ラフマニノフが自分の幸福の瞬間を圧縮して記録したようなこの作品を、見事に輝かせる。彼のニ長調前奏曲を聴くことは、筆者の音楽体験の宝物である。続いて、うさぎさんによるラフマニノフ=リチャードソン編:ヴォカリーズOp.34-14。夏に続いての演奏である。うさぎさんのソロは、いつもすごく心を込めて音を鳴らしていらっしゃるので、筆者はそのファンである。まして、この超名作にあっては、作品の魅力と弾き手の暖かなアプローチによって、素敵な演奏になったことは言うまでもない。リチャードソン編が弾かれたとあっては、やはりワイルド編も行っておかなくては、ということで、KUMOさんの登場。ラフマニノフ=ワイルド編:ヴォカリーズOp.34-14である。複雑な和音や分散和音の中で、中音域が巧みにメロディを鳴らしたり、途中に小カデンツァが付いていたりする、この難曲を、KUMOさんは何の躊躇いもなく、しかも気持ちを込めて弾ききる。繊細に鳴らされたメロディが、途中大河の流れのような激動を経て、再び静寂にかえり、そして最後の和音が宙に消えていく…この作品の美しさを凝縮した心に染みる演奏であった。母校の後輩KUMOさんに負けてはいられまい、とササーホフさんの再登場。夏にお弾きになっていたラフマニノフ:前奏曲変ホ長調Op.23-6は、今回は予告編に格下げになってしまった(笑)。しかしさらにササーホフさんは、王国の第2テーマラフマニノフ:前奏曲変ロ長調Op.23-2で「王国は永遠なり!(°o°)!」を高らかに宣言する。ピアノどころか、スタジオ全体に揺れが来るようなパワーは、やはりホノルルまで行ってマラソンを完走してくるという熱心な体力作りによるものだろうか。それともカレーと麦酒の力だろうか。いずれにしても、いつもながらの名演を聴かせてくださった。


怒涛のラフマニノフ連続攻撃に、ふっと優しく落ち着いた雰囲気をさし込んで下さるのは、何と言ってもぴちさんのお役目である。プーランク:ノクターン第1番ハ長調は、ガラナスキーさんがプーランクの中で特に愛好されている作品であり、楽譜を見た瞬間、ガラナスキーさんは喜びの声を上げておられた。ぴちさんのプーランクは、夏に聞かせてくださった繊細なノヴェレッテに続くもので、親しみやすい曲想にちょっぴりの哀愁と孤独を乗せたこの粋な作曲家の魅力を十二分に伝えてくださる演奏である。これに気分を良くされたガラナスキーさんにヴァイオリン再挑戦をお願いしてみると、不安げな表情を浮かべつつも、せっかくだからと再び楽器を手にしてくださった。ガラナスキーさん(Vn)&KUMOさん(pf)によるラフマニノフ=ハイフェッツ編:前奏曲ト長調Op.32-5である。音楽史に燦然と輝く大ヴァイオリニスト、ヤッシャ・ハイフェッツによる御大作品の編曲を聴くことの出来る大変貴重な機会ともなった。筆者も初めて耳にしたのだが、ヴァイオリンまたはピアノが常に主旋律を独占するわけではなく、少しずつ受け渡す編曲に面白さを感じた。緊張するからと今度は椅子に座っての演奏となったガラナスキーさん、途中弾きなおしもあったが、KUMOさんの好サポートを得て最後まで素敵な演奏を聴かせてくださった。ガラナスキーさんのヴァイオリンで、暖かな空気が流れたところへ、それを急速冷凍させるあの凹凸デュオ再び、である。かとちぇんこ(1st)&うさぎさん(2nd)によるラフマニノフ:《連弾のための6つの小品》Op.11より第3番「ロシアの歌」は、次回にまわそうと相談していたのを急遽弾いてみようかということになったもの、ほとんど合わせたことがないという、まさに一夜漬けの期末試験状態(?)である。途中何が何やら分からないものになりかけたが、次回に弾けそうな目処が立ったので、よしとしておこう(笑)。

さて、楽しい楽しいピアノオフも、残り時間がわずかとなってきた。続いてはジュンキーノフさんベートーヴェン:ピアノソナタ第23番ヘ短調「熱情」より第3楽章を弾いてくださった。唖然、圧倒。凄い。題名通りのパッション溢れる演奏で、聞き手を一気に引き込む。プロ並みの集中力である。プロ並みの集中力と言えばこの人も忘れてはなるまい。KUMOさんが、来年の学園祭にと計画されているラフマニノフを披露してくださった。まずはラフマニノフ:前奏曲嬰へ短調Op.23-1、陰鬱なロシアの荒野を思わせるこの作品、これを学園祭で弾いてしまおうという彼の意欲が素晴らしい。曲の余韻を漂わせつつ、ペダルを離さずに楽譜をめくったので、聴衆一同「おっ!」と目を見張ったのだが、続けざまにラフマニノフ:前奏曲変ロ長調Op.23-2に入っていかれた。まさにプロのような演出である。全体の「ひらひら」感がうまく出ないと以前から会議室でおっしゃっていたこの作品であるが、実際に聴かせていただいたところ、見事な演奏で、落ち葉がゆっくりと舞い落ちてくるかのような優雅さを漂わせていた。これが、さらに学園祭までにどのような演奏に高められるのか、筆者を含め、皆の期待が膨らむところである。時間もなくなってきたところで、ゲストの方にもう1曲お願いした。横浜ショパンさんによる、ショパン:ノクターン第20番嬰ハ短調(遺作)である。丹念に綴じられた楽譜からして、思い入れの深さを感じさせるもので、1年間練習してこられたというノクターンは、朴訥としながら繊細な情感を感じさせる演奏であった。ピアノオフももう終わろうかというところ。そう言えばいつも演奏している6手連弾に今日は手をつけていないことに気づいた。そこで最後はぴちさん(1st)&うさぎさん(2nd)&KUMOさん(3rd)によるラフマニノフ:6手連弾のための「ロマンス」でしめていただくこととなった。KUMOさん、ぴちさんは、すでに他の機会に6手の作品を発表される場を得ていたそうである。ラフマニノフ若き日のこの青春の名作が少しずつ広まっているようでうれしいかぎりである。演奏も、皆が演奏者の後ろに集まって楽譜を覗きこみはじめ興味津々に見つめるなか、ピアノオフを締めくくるに相応しい美しいものとなった。




ピアノオフを終えて会場を後にすると、そこには仕事を終えて夕食から駆け付けてくださった暇王ロジェスワヴェンスキーさん。ゲストの方々を含め、いつもどおり通行人に迷惑をかけつつ(笑)、記念写真をぱちり。充実したピアノオフにゲストのお三方も大変楽しまれたようで何よりであった。名残惜しいが、ここでゲストの皆さんとはお別れ。そして、夕食のために予約したイタリアン・レストランカプリチョーザに移動した。

ここでは、王様の音頭のもと、ピアノオフの成功とオノーリンさんのご結婚を祝して乾杯。昨年の小クリスマス会で好評だったCD交換を再び行った。筆者の促しによりトランプで抽選。各自お気に入りのCDを持ち寄ってランダムに交換した結果は次のとおり。ダブリや既に持っているCDだったということもなく、スムーズに交換が行なわれた。それぞれが大切に聴いていけるといいなと思う。


プレゼントCD当選者と内容
ガラナスキーさんジュンキーノフさん
アーロン・ジェイ・カーニス:「ラメント&プレイヤー」(ヴァイオリンのためのエア他)
ジョシュア・ベル(Vn)デイヴィッド・ジンマン指揮ミネソタ管弦楽団、他 [Decca(argo)]
ジュンキーノフさんアイスキーさん
イグナツ・フリードマン:ピアノ名演集
アイスキーさんしほーにゃさん
The Art of Theremin(楽器テレミンによる作品集、ラフマニノフのOp.4-4収録)
しほーにゃさんヒロノフさん
シベリウス&チャイコフスキー:ヴァイオリン協奏曲集
ダヴィッド・オイストラフ(Vn)ゲンナジー・ロジェストヴェンスキー指揮ソビエト国立文化省管弦楽団、他[Melodiya(BMG)]
ヒロノフさんササーホフさん
スティーヴン・ハフ:ピアノ名演(名曲)集
ササーホフさんかとちぇんこ
ラフマニノフ:カンタータ「春」、交響曲第3番、3つの無伴奏合唱曲
ヴァレリー・ポリャンスキー指揮ロシア国立交響楽団他[Chandos]
かとちぇんこえみーりゃさん
C.H.パリー:ヴァイオリンとピアノための作品集
エーリッヒ・グリューエンベルク(Vn)ロジャー・ヴィニョールス(pf)[Hyperion]
えみーりゃさんぴちさん
ジャック・ルーシエ プレイズ バッハ
ぴちさんオノーリンさん
エルガー&フランク:ヴァイオリンソナタ集
五嶋みどり(Vn)ロバート・マクドナルド(pf)[Sony Classical]
オノーリンさんロジェスワさん
マルク=アンドレ・アムラン ライヴ・アット・ウィグモアホール[Hyperion]
ロジェスワさんKUMOさん
ベートーヴェン:交響曲第9番「合唱付き」
ゲルト・アルブレヒト指揮読売日本交響楽団他[Exton]
KUMOさんうさぎさん
シューマン:歌曲集「詩人の恋」他
フリッツ・ヴンダーリヒ(テノール)ヒューバート・ギーゼン(ピアノ)[DGG]
うさぎさんガラナスキーさん
J.S.バッハ:ピアノ作品集 アンドラーシュ・シフ(pf)


夕食会では、色々な話をしたり、写真を撮ったりと、本当に楽しく充実した時間となった。3時間ほどがあっという間に過ぎ、いよいよ閉会の時。例によって池袋駅でKUMOさんを全員でお見送り。その後、他の参加者も散会となった。夏に負けず劣らず充実したピアノオフ会、参加者それぞれにとって有意義な体験になったのではと思う。素敵な音楽仲間にこの日もまた感謝感謝であった。



これにて、かとちぇんこの12月17日ピアノオフ会報告を終わります。お読みいただいた方、ありがとうございました。夏の報告の繰り返しになりますが、参加者の楽しさが伝わることを願うのみです。次回の集まりを楽しみに、今後も益々充実した活動になることを祈って、オフ会報告とさせていただきます。
2000年12月19日:しまのふすかやファンクラブNo.9 かとちぇんこ

文:かとちぇんこさん 写真:えみーりゃさん、しほーにゃさん&(°o°)